るうちゃんとの合作です。途中までむりやり描写があります。
「高尾……。俺を誘惑するとは、悪い生徒なのだよ……」
先生の腕に強く抱き寄せられて、何がなんだかわからないうちに唇が重なった。
なんだこれ。なんだこの状況。
頭は大混乱しているのに、オレの唇は勝手に先生の唇の甘さに酔いしれる。びっくりするくらいやわらかくて、熱い。いつも固く引き結ばれている先生の唇が、こんなにやわらかいなんて思ってもみなかった。すごく、気持ちがいい。
「ん、ぅ……」
ほんのすこしだけ唇が離れてまたくっつく。その感触にぞわりと腰がふるえ、まるで自分のじゃないような声が漏れた。あわてて唇を離して先生と距離をとる。いくら鍵がかかってるとはいえ、いつ誰がノックしてきてもおかしくない。なんせ、ここは理科準備室なのだ。
ビーカーやフラスコや試験官が詰め込まれた棚が並び、窓際では人体模型が埃をかぶって立ち尽くし、難解な本がタワーを作ってる。この雑多な部屋に生息している緑間先生はオレの学年では化学を教えてる教師で、バスケ部の顧問だ。
変な語尾でしゃべるし、変なモン持ち歩いてるし、愛想はないし、やたら目ざとくて細かいことを記憶している妙な先生を、オレは一目で気に入ってしまった。こんなおもしろい先生、他にいない。いつも白衣を着てぴしりと背を伸ばし、機械みたいな規則正しさで化学を教える先生が、放課後はまるで別人のようにしなやかに体を動かしてバスケをしてみせるギャップもたまらなかった。気がついたら、自分でもどうかと思うくらい好きになってしまっていた。
まさか男に、しかも教師に恋をするとは思ってなかったけど、そんなことどうでもいい。オレは中学生で、おまけに男だから、先生の恋愛対象にはなれないけど、それもどうでもいい。一緒にいられるうちは、一緒にいる。たくさん楽しい思い出を残す。オレの中に、そして先生の中に。そうしたらきっと、この気持ちは永遠に消えないものに変化できるはずだ。
えっと、それで先生は、今、なんて言ったんだっけ。オレのこと悪い生徒だって?
「ゆ、誘惑なんてしてない」
自分がどんな表情をしているかわからないから、先生の顔が見られない。心臓がすごい勢いで鼓動を刻んでいるせいで考えが全然まとまらない。なんでオレはキスされたんだろう。誘惑ってなんのことだろう。そんなのするわけない。普通じゃない気持ちを気づかれないようふるまうのに毎日せいいっぱいなのに。
「この前、女生徒と下校していただろう」
あたたかく濡れた感触が耳を這って、思わず肩が跳ねる。おそるおそる目線をあげたら先生がじっとこっちを見ていて、混乱は深まるばっかりだ。今耳にふれたものはなんだ? ダメだ、先生の緑色の瞳に射抜かれて、オレの脳は回転を止めてしまった。
「……そ、そりゃ同じクラスのコと帰るくらい、あるだろ……」
別になんにも変なことじゃない。それなのに先生の口調はオレを咎めているかのようだ。まるで、そう、オレが浮気でもしたみたいに。
オレが誰と仲良くしたって、先生に責められる筋合いなんかない。だって、オレたちつきあってなんかない。万が一、先生が男もオッケーな性質だとしても、オレは好意をほのめかすそぶりなんか見せてない、はずだ。慎重に距離をはかってやってきたから、オレと先生との関係はちょっと親しい生徒と先生の範囲からはみでていない。
それに、それを言うなら先生だって。
「……先生だって、女子を車に乗せて帰ってたくせに」
オレは知ってるのだ。学年で一番なんじゃないかってくらいとびきりかわいいコを、夜遅くに先生が車に乗せて帰ったことを。バスケ部員のオレだって、先生の車に乗ったことなんてないのに。
そうだ、先生がオレに誘惑なんかされるわけない。あんなかわいいコと親密になってるんだから。
先生は眉間にシワを寄せ、すらりと長い指をオレの首に当ててゆっくりと撫でた。ぞわりと鳥肌が立つ。そんなさわられかた、今まで誰にもされたことない。
「俺の知るかぎり、年頃の男女がふたりで下校するのは親密な間柄の証拠なのだよ」
ずいぶん古くさいことを言いながら、先生はオレの体を撫でたり指を絡めてなぞりあげたりしている。なんだ、なんだこれ。こんなのまるで――。
「ここに触れさせたのか……?」
先生がオレの手を口元まで持ち上げる。そのまま手のひらに口づけられて、オレの思考はぱちんと爆ぜた。
もしかしてという、心臓を沸騰させるような期待が全身を満たしていく。どろりと甘い蜜のような可能性に、けれどオレは頭を振った。
先生が、オレを。ずっと夢に見ていた。だけど、そんなこと現実になるわけない。なっちゃいけない。
「じゃ、じゃあ、夜遅くに車でふたりっきりになるのは親密じゃねえのかよっ」
子どもみたいな屁理屈を言いながら、口づけられた手を胸元に引き寄せる。これ以上ふれられたらおかしくなりそうだ。なんとか冗談に変えて、この場から逃げ出してしまいたい。
「仕事とプライベートは別なのだよ」
瞳を鈍く光らせて、先生はオレの手を奪い取った。消毒をしなくては、とつぶやいて親指から順に丁寧に舐め、口づけていく。
濡れた唇からちらちらとのぞく赤い舌から目が離せない。初めて目の当たりにした先生の性的なしぐさは信じられないくらい綺麗で洗練されていて、いつまでも見ていたくなってしまう。
「ちょ、や、やめろよ……っ」
手を引こうとしても、まったく力が入らない。それが先生の力が強いせいじゃないことに気づいて、耳がカッと熱くなった。
ダメだ、これ以上は本当にダメだ。バカな期待をしてしまう。そんなわけない。先生は男なんだから、女が好きに決まってるのに。
昨日、先生に送ってもらっちゃった。得意げに自慢していたあのコの顔が脳裏に浮かぶ。不愛想で生徒に興味なんかなさそうな緑間先生の親切に、教室がわっと沸いたことも同時に思い出す。
そうだ、あのときあのコは――
「……そ、そうやって、いろんなやつに同じようなことしてんだろ!?」
――先生、あたしのこと好きみたい。
そう言ったのだ。
あの女子にも、先生はこんなことをしたのかもしれない。仕事とプライベートは別なのだよ、おまえを送るのは特別な好意があるからだ。そう言って、こんなふうに手のひらに口づけたり、それ以上のこともしたのかもしれない。
先生のやけに物慣れた態度が、ゆらゆらと揺れた期待を一気に不安へと変える。そうだ、先生はオレよりずっと大人なのだ。ちょっと思わせぶりなことをされたからって、オレが特別だなんて思っちゃいけない。
「仕事でなければ乗せてやりはしないのだよ」
先生が薬指に口づける。まるで何かの誓いみたいに見えてしまう自分が嫌で、目をそらした。
「なんだ、ヤキモチを妬いているのか?」
オレを見て、先生はふっと笑う。そしてあろうことかオレの手を、自分の股間に押しつけた。
「俺がこうなるのはお前だけだ……」
みるみるうちに顔が赤くなるのが自分でもわかった。言葉を発せられずに口をぱくぱくと動かす。先生のそこは、ズボン越しでもわかるくらいはっきりと硬くなっていた。
それが何を意味するのかを理解してぐらぐらと頭が煮える。不安がまた、ひっくりかえって期待になる。
「……だ、だって……車に乗ったやつが、先生は、自分に気があるって……」
「その生徒がなにを勘違いしたか知らんが、俺をただの男にするのは高尾……、お前だけだ」
キザな発言に、ますます頬が熱くなる。ここまで言われて気づかないフリなんてできない。はっきりと、先生はオレを口説いている。
うつむいて白衣の端っこを掴む。嘘みたいなことが現実に起きているのがまだ信じられなくて、何かに縋りたい気分だった。
「……ほんとに、オレだけ? 先生が生徒に手出したらまずいんじゃねえの……?」
「そうだな、バレたらどうなるか分からないな」
先生はくすりと笑って、オレの頬を優しく撫でた。そのあたたかい感触とは裏腹に、頭は急速に冷えていく。何の気なしに放った自分の言葉がオレを現実に引きもどす。そうだ、ホントのホントに先生がオレのことを好きでも、先生と生徒という関係は変わらない。
「……や、やっぱダメだ。先生は、オレにこんなことしちゃダメなんだ」
教師が中学生に手を出して逮捕されるニュースなんて、いくらでも見たことがある。逮捕された教師がどんなふうに世間から扱われるかだって、知ってる。そんなのダメだ。
あとずさって先生と距離をつくる。上履きがキュッと場違いに高い音を立てた。
今ならまだ大丈夫だ。何もなかったことにできる。それなのに先生は不機嫌そうに眉を寄せた。
「今さら何を言っているのだよ。俺を狂わせておいて逃げるなど、許しはしない……」
ぐいと腕を掴まれ、引き寄せられてオレのつくった距離はあっけなくなくなった。先生の真剣な顔が間近に来て心臓が高鳴る。こんなに近くで顔を見るのは初めてで、本当はいつまででもこうしていたいけど。
「や、オレ、なんにもしてねーっての! 離せよ、生徒で欲求不満の解消なんかすんなっ」
「高尾でしかこうはならないのだよ」
先生が怒りそうな言葉をわざと選んでいるのに、まったく意に介してもらえない。そういえば先生はわりと人の話を聞かないヤツだった。自分がやると決めたことは、絶対にやりとげる。そういうとこが好きなんだけど、今はとても困る。
オレが困惑しているあいだに先生の腕はオレの腰を抱いて、体を密着させてくる。さっきふれらせられた硬い熱が腹のあたりで存在を主張してきて、ますます背筋が冷える。先生は、本気なのだ。本気でこの先に進もうとしている。
「誰にも言わなければ何も問題はない。ふたりだけの秘密だ」
間近で囁かれる言葉の甘さに頭が痺れる。唇をかすめていった熱い感触は、オレがそれが何かを理解するまえにぬるりと咥内に滑りこんできた。
いつのまにか首の後ろを先生につかまえられていて、身動きがとれない。先生の舌は自在にうごめいてオレの口の中をくまなく舐めとっていくから、体は意思と裏腹にどんどん熱くなっていく。ディープキスがこんなに気持ちいいなんて、知らなかった。
でも、ダメだ。ダメなんだ。
だけど勃起した男の判断力なんて消しゴムのカスみたいなもんだってわかってる。だから、オレが先生の代わりに正しい選択をしなくちゃなんない。
「んっ、んんんっ! んーっ!」
反抗の意を伝えるべく、先生の腕を思いきり叩く。何度かべちべちやっていると、ようやく先生が唇を離してくれた。
「痛いのだよ」
首を押さえていた左手がオレの両手首をつかむ。そして先生は無情にもオレに再び口づけた。
「んっ、んんーっ!」
舌が絡まる。軽く吸い上げられ、上顎をくすぐられて歯列をなぞられる。だんだん足ががくがくとふるえだして、うまく立っていられなくなってしまう。キスだけで腰が抜けそうになるとか、経験のなさをバラしているようで恥ずかしいけど、取り繕う余裕なんてどこにもない。
それでもオレはがんばった。ほとんど先生に体をあずける体勢になってしまっても、頭を振ったり上半身をひねったりして拒絶をつたえる。これ以上オレがくにゃくにゃになってしまうまえに、やめさせないと本当に取り返しがつかなくなる。
長い長いキスの果てにようやく先生はオレの意図を汲んでくれたようだった。ぴったりくっついていた先生の唇が離れる間際にオレの唇をやわく食んでいく。その慈しむような感触に、思わずじわりと涙が浮いてしまった。
「は、……高尾。何故拒むのだよ……」
先生の指がオレの胸元を這う。シャツの上から乳首のある場所を撫でまわされて、今まで感じたことのない感覚が背を走った。静電気のようにぱちぱちと体の中で弾けて爆ぜる。ウソだろ、女じゃないのにこんなとこで感じるなんて。
「……好きだ…………高尾……」
ずっと夢見ていた言葉が先生の唇からこぼれて、体と心の両方を責められている気分になる。
「ぁ、あぁっ、や……っ」
でも、オレはそれに応えてはいけない。
「オ、オレは、先生のこと、好きなんて言ってない……。やめろよ、離せっ」
「そうか……好きではないか……」
先生は捨てられた犬のような顔をした。本心とは逆のことを言ってズキズキと痛む胸が、さらに痛みを増す。
だけど先生のためだ。緑間真太郎が生徒に、中学生に、男にわいせつなことをして逮捕されました、なんてニュースを全国に流させるわけにはいかないのだ。
「先生、あの」
「――ならばおまえを脅すしかないな。大人しくしていろ、痛いことはしないのだよ」
「え、脅すって……あ、ちょ、ひぅ! や、やめ……ぁ、あ」
ああ、どうして先生ってこうなんだろう。普通好きじゃないってフラれたらあきらめるだろ。発想が斜め上すぎて、ホントにおもしろい。
いつもなら笑い飛ばすのにそうできないのは、先生が乳首に歯を立てたからだ。ぴりっと鋭い痛みが走ったあとでじわりとシャツが濡れる感触がして、それが先生の唾液だと思うとくらくらした。
「いやらしい身体だ、シャツの上からでも立ってるのが分かる」
歯を立てて愛撫しながら、先生はオレのシャツのボタンを外して反対側の乳首を弄り出す。細くて長い指先に摘ままれると、また体中にぱちぱちと電流が走る。
みっともない声をあげそうになるのを必死にこらえているうちに、シャツはオレの肩から滑り落ちていく。裸になったオレの胸に舌と手を這わせながら、先生は信じられないことを言った。
「試合、出たいだろう? おとなしく身を任せろ」
それは正しく脅しだった。おとなしくしていないと、バスケ部の試合には出さない。
先生が、そんな卑劣なことを言うなんて。
涙のかたまりがこみあげてくるのを必死に飲み下す。オレが知るかぎり、緑間真太郎という人間は潔癖すぎるほどに潔癖だ。曲がったことが大嫌いで、不正なんか絶対に許さない。ひと回り年下のオレにまで、生きるのが不器用だと思わせるほどに。
そんな先生が好きだ。でも、今、先生にこんなことを言わせているのはオレなのだ。情けなくて悲しくて、こんな状況じゃなかったら大声で泣き出してやりたいくらいだ。
「先生……っ、ひ、ぅ……やめて…………こんな、だめだ……」
ふるえる手をなんとか伸ばして、肩をつかむ。もっとちゃんと言葉を発したいのに、口がうまくまわらない。先生の舌や手はオレから抵抗の意志を奪っていくみたいだった。そりゃそうだ、だって本当はオレだってやめたくなんかない。
先生はオレの名前を囁きながらまた口づけてくる。ずるい、それは反則だ。もともと低くていい声なのに、欲情して掠れているから色気が尋常じゃない。この声に乞われて拒める人なんているんだろうか。
そんなことを考えているあいだに、先生の手はオレの体のあちこちをまさぐってズボンに到達した。器用に片手でベルトを外してズボンをずり下ろし、尻を揉みしだいてくる。尻なんかさわられて気持ちいいはずがないのに、でかくて熱い手のひらに包まれると勝手に体が跳ねた。過敏すぎる反応に羞恥が沸いてくる。
「立っているのだよ」
短く言い捨てて、先生は膝をついた。いきなり下着を引き下ろされる。
「ひぁっ!?」
驚いて身を引くが、後ろには壁があってすぐに追い詰められてしまう。半勃ちになっているオレの性器が夕日に照らされて、ものすごくいたたまれない。ここは学校なのを思いだして背が震えた。しちゃいけないことを、している。
ダメだ、流されちゃダメだ。見つかったら大変なことになる。先生が逮捕されてしまう。
股間の正面に先生の顔があるのに耐えられず、ぎゅっと目をつぶったオレだったが、熱くてやわらかくて湿った感触に目を見開いた。先生が、オレの性器を咥えている。
とんでもなく卑猥な光景だ。興奮に体が熱くなっていく。こんなこと誰にも言えやしないけど、先生にこういうことされたいって、ずっと思ってた。でもダメだ、ダメなんだってば。今日は体育もあったし朝練も昼練もしたからたくさん汗をかいた。そんな汚いものを先生にしゃぶられるなんて耐えられない。耐えられないのに、気持ちが良くて腰が揺れる。
「や、やだ、ぁ、ぁ!」
くちゅくちゅと水音が響く。舌が裏筋を擦って、先端を強く吸われる。フェラされんのだって初めてだけど、頭がバカになりそうなくらい気持ちがいい。どんどん性器が硬くふくらんでいくのがわかる。もっと舐められて擦られて吸われていたくて、それ以外の思考がばらばらに砕けて散っていく。
「大丈夫だ。なんの心配もいらないのだよ」
「……ぁ……?」
言われたことの意味がわからず、うっすらと目を開いて先生を見る。先生は自分の指を口に含んでいて、オレの視線に気づくと目を細めた。
「せんせ、……あ、ひッ!?」
先生はまたオレの性器に唇を寄せた。それだけじゃない。濡れた指先がオレの尻をたどり、その奥をなぞりはじめた。
「や、やだ、やめ、ぁ……ッ」
ぬち、といやらしい音がして尻に違和感が生じる。腹からせりあがってくる圧迫感がなんなのか最初はわからなかったけれど、尻の穴に先生が指を入れたのだと理解して体がこわばった。先生から与えられていた痺れるような快感が一気に吹き飛ぶ。
「や、やだ、何すんだよ……」
オレの混乱は頂点に達した。理科準備室なんかで裸にさせられて、あちこち舐めたりさわられたりしている時点でだいぶ理解の域を超えてるけど、これはもうそういう段階じゃない。何がどうなるのかわからない、純粋な恐怖がこみあげてくる。
「ひ、ぅ、うぅ、やだ、先生、こわい……」
もうつよがることなんかできやしない。転がり落ちた本音に、先生は「何も怖いことはないのだよ」とささやく。その声も視線も優しいのに、中に埋められた指は容赦なく奥へ奥へと潜り込んでくる。
「ふ……っ、う、やだ、や、ぃやだ……っ」
押し広げられる痛みと異物感から逃れたくて、必死でいやだと訴えるけど聞き入れる気はなさそうだ。なだめるように萎えかけたものに舌を絡ませ、鈴口をつついて裏筋を擦る。気持ちいいのと気持ち悪いのがごっちゃになって、ますます何がなんだかわからなくなっていく。
ふと、奥を探る指が止まった。涙で曇る視界で、先生が目を光らせたのが見えた。
「……ここを擦られると気持ちがいいだろう?」
「――ッ!!」
ふに、と内壁のどこかを押されて、今までとは比べものにならないくらいの強い衝撃が走った。いっそ痛いくらいの刺激に、ぼろぼろと涙がこぼれる。
「ん、んぅっ、や、やぁ、ふぁっ!」
自分のとは思えない、甘ったるく媚びたような声がこぼれる。自分でも嫌がっているようには全然聞こえないのが恥ずかしくて、手で口に蓋をする。
なんでこんな気持ちいいんだろう。ちんこを舐められて気持ちいいのはわかるけど、尻の中をいじられて気持ちよくなるなんて聞いたことない。先生のテクがすごいのだろうか。それともオレが変なのだろうか。どっちにしても、もうやめてほしい。おかしくなってしまう。ぐちゃぐちゃに溶けてしまう。
必死に首を振るオレを見上げ、先生は満足そうに口の端をあげる。
「いいこだ……」
先生に褒められることなんてめったにない。だけど全然喜べない。
ぐちゅぐちゅと音を立てて、指が中をかき混ぜているのがわかる。気持ちいいわけがないその動きにも腰ががくがくと震えた。前はすっかりがちがちに硬くなっていて、先生の舌が這うたびに射精感がこみあげてくる。もうダメだ。早く解放したい。解放されたい。うんと気持ちよくなりたい。
先生はオレの心情なんかすっかりお見通しみたいで、ますます激しく攻め立ててくる。強く先端を吸い上げながら、オレの中にあるおかしくなる箇所を何度も何度も押し潰す。
「んっ! んぅーっ、ッ! あっ、あぁぁっ!」
我慢なんかできなかった。頭がまっしろになって、ひときわ強い快感に全身攫われる。限界まで育った熱いものを吐き出すのは、とても気持ちがいい。今まで自分でしていたのとは段違いの快楽だった。
「ぁ……」
先生の口の中に出してしまったことに気づいたのは、完全に射精を終えたあとだった。一気に気怠い疲労が襲ってきて、へなへなと床に座り込む。裸の尻が床にくっついて気持ちが悪いけど、立ち上がる気力なんかどこにも残ってない。
イッてしまった。先生に、イかされてしまった。どうしよう。これでもう先生は立派な犯罪者だ。
「高尾」
先生の太い喉がごくりと上下して、オレが出した精液を飲み下す。白衣の袖で口元をぬぐって、先生はオレの頭を撫でた。
「上手に射精できてえらいのだよ」
どこがえらいんだよ。反論したくてももう口を開くのさえ億劫だ。そんなオレの頭をもう一度撫でてから、先生はオレをゆっくりと押し倒した。
足を開かされて、これから何をされるのか理解する。このまま我慢していれば先生の気は済むんだろうか。でも、痛いのは嫌だ。こんなふうに脅されて体をつなげるのも、嫌だ。
ぼろぼろと涙を流すオレには見向きもせず、先生は自分のズボンのチャックを下ろして下着から勃起したものを取り出す。赤黒く膨張したそれはオレのよりずっと大きく、おそろしい凶器のようだ。
「これは先生との秘密なのだよ……」
先生の性器がオレの尻に擦りつけられる。無理だ。こんなの入るわけない。絶対に痛い。裂ける。
本気で恐ろしくなって身をよじっても、全然効果がない。あげく先生に腰をしっかりと押さえつけられてしまい、先端が中にぐぷりと埋め込まれる。
「ァ、ぁあっ、ひ、ぐ、くるし……ッ」
焼けるような衝撃が全身を貫く。痛いのかどうかももうわからない。ただ熱くて、腰から下がバラバラになってしまったようで、怖い。でかいものに腹を圧迫されて、苦しい。
ゆっくりと奥に押し込まれていく感覚に、喉を反らす。声にならない悲鳴が喉から押し出されて、視界がちかちかと明滅した。
「ほら、ここに先生のがあるのが分かるか……?」
すべてを収めた先生はオレの腹を愛おしそうに撫でる。ゆったりと腰を揺すられ、反射的に体が跳ねた。挿れられてるだけでもこんなに苦しいのに、抜き差しなんかされたら死んでしまう。
「……ふ、ぇ……っ、ぁ、ぅ」
やめてほしい、と言いたいけど言葉にならない。オレのぐしゃぐしゃな顔を見て、先生は瞳をぎらつかせた。まさかとは思うけど、オレが泣いてるのを見て興奮しているらしい。変態かよ、とののしりたい。
オレにかまうことなく、先生はゆっくりと性器を引き抜き、また奥まで押し込む。思ったより痛くはないけど、体の中をぐちゃぐちゃにされる感覚がとにかく怖くて、涙が止まらない。さらに始末が悪いことに、異物感の底のほうからすこしずつ、水が滲み出してくるように快感が生まれはじめていた。
「ひ、ぅ、うう、ぅえ……っ、ぁ、う」
もう嗚咽を抑えることもできず、先生に揺さぶられるたびに泣き声が漏れる。硬くふくらんだものが奥を押し広げていくたびに、じわりと快感が広がる。怖いのに気持ちいいとか、自分の感情がもうよくわからない。体だけじゃなくて心も先生にぐちゃぐちゃに犯されているようだった。
何度も角度を変え、内壁のあちこちを突かれるたびに涙が散る。欲情しきった先生がかすんだ視界に映ってますます悲しくなる。だって、こんなの望んでない。オレの意志を無視してオレに好き勝手するなんて、愛があるセックスにはとても思えない。ただ先生が気持ちよくなりたいだけの行為。そんなの、オレに対する好意なんて必要ないじゃないか。
「ゃ、せんせ、やだ……っ、こんな、の、やだ、やめろよぉ…っ」
こんなの嫌だ。せっかく、先生が好きだって言ってくれたのに。それならもっとちゃんと、心を通わせて抱きあいたかった。脅されて無理やり犯されて、そんなのホントに犯罪じゃないか。
「高尾……?」
オレが本気で泣いていることに、先生はようやく気づいたらしい。揺さぶる動きが止まり、頬を撫でられる。
「泣くな。泣かないでくれ……。好きなのだよ、高尾……」
先生の手のひらが頬を包んで、顔のあちこちにキスをされる。唇の感触が優しくて、硬くこわばっていた心がすこしほどけた。目線を上げると、頼りなく揺れる先生の視線とぶつかる。先生は、今まで見たこともないような不安そうな表情をしていた。
本当に、しょうがない人だ。ひどいことをしているのは先生のほうなのに、なんだかオレが傷つけているような気になってきて、なじってやろうと思っていた気持ちがしぼんでいく。だって、そんな顔してほしくない。
しかたがないから、力の入らない腕で先生を精いっぱい抱きしめる。
「オレ、だって……せんせのこと……好き、なのに……。おどす、とか……そんなん、やだ……」
「高尾、すまない、すまなかった……」
よしよしと髪を撫でられ、頬に口づけられる。
「好きだ。高尾を好きだから、抱きたい」
ようやくたどり着いた言葉に、また涙が転がり落ちる。鼻をすすりながらもっと強く抱きついて、うまく呂律が回らない口を懸命に動かす。
「せんせ……せんせい……。でも、先生が、中学生とこんなことして、つかまったら、やだ……から……」
「捕まりはしないのだよ。高尾が俺を好きなのだから」
ちゅっちゅっと何度も口づけながら、先生は説明してくれた。未成年との性交は、真剣な交際であれば罪には問われないらしい。
「真剣な……?」
「そうだ。オレは本気だ。本気でおまえが好きだ。おまえはちがうのか?」
「ちがわ、ない……。じゃあ、ホントに? ホントに、先生、逮捕されねぇ?」
「ああ、本当だ」
「そっかぁ……」
こみあげてくる安堵そのままに、オレは笑った。よかった。本当によかった。それならなんにも問題はない。最初っから、拒む必要なんてなかったんだ。
「高尾……」
先生の唇がつむじに押し当てられる。ゆっくりとオレの様子をうかがうように腰を揺すられて、素直に気持ちがいいと思った。現金なもので、不安が氷解したら恐怖なんてものはどこかに行ってしまったらしい。
「ぁ、あ、せんせ……っ、きもちい……。ぁ、な、こういう、ときは、オレどしたら……っ、いい?」
されるばっかりじゃイヤだ。問いかけると先生は花が咲いたように微笑んだ。
「そのままで、いい 。痛かったら言え。俺は高尾の顔を見ていたい」
すこしだけ体を起こし、先生はオレの胸をまさぐった。好きだ、と優しい響きが降ってきて思わずオレも、と返すと、たまらないといった表情でキスをされた。
「高尾……、動くぞ、いいか?」
興奮に息を荒くする先生に、ぶわっと肌が粟立つ。もう怖くも悲しくもない。もっと先生と、気持ちよくなりたい。
「いいよ……。先生が、したいようにして」
「いい子だ」
よしよしと髪を撫でられる。子どもみたいな扱いはやめてほしいけど、オレの顔の横に両手をついてがつがつと打ちつけられると何も言えなくなる。
オレを見つめる先生の瞳が、ゆらゆらと揺れているのが見える。先生も気持ちがいいんだと思うとたまらない気分になった。熱が全身に回ってふわふわしてくる。
「先生……っあ、ふぁっ、やぅ、ぁっ」
中をぐちゅぐちゅとかき回され、さっきまでとは全然ちがう快感がこみあげてくる。無理やり引きずり出されてるんじゃない、自分できちんと受け入れられてる快感は涙が滲むくらいに気持ちよかった。考えるまえに、言葉が口から出ていってしまう。
「ぁ、あ、ん、おなか、へん……っ、むずむず、する、っ」
「はぁ……可愛い……」
熱に浮かされた先生の声が、「高尾、それは気持ちがいいと言うのだよ」と続く。
「ちゃんと快楽を感じて、高尾は優秀だ……」
「ぁ、ぁあ、うぁッ」
ごりごりと硬いものが中を擦りあげていって、思わず背を反らす。先生は片手で体を支えて腰を振りながら、オレの乳首を弾きはじめた。
「こっちも、気持ちがいいだろう?」
「ぁっ、ふあっ、きもちい……?」
そう言われて初めて、オレは初めて先生にどんな姿をさらしているのか自覚する。足を開いて先生のものを咥えこみ、胸をいじられて女みたいにあんあんと喘いでいる。気持ちよくなっているのだと、先生にバレている。今さらだけど、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「ぁ、ひぁっ、や、はずかし、からぁ、やめ……っ」
「恥ずかしくなどないのだよ。もっと感じていい、もっと気持ちよくなるのだよ……。高尾が、気持ちがいいと、先生も気持ちがいい……」
ひっきりなしに中を擦られ、押し広げられる。奥のほうを強く抉られるたびに足や腰が痙攣する。ぐにぐにと中がうねっているのが自分でもわかった。
これ以上とか考えられないけど、オレが気持ちよければ先生も気持ちよくなるなら。もっともっと気持ちよくなって、もっと先生を感じさせたい。先生がイくところを、見てみたい。
「……せんせ、も……ぅ、きもち、く……」
息を吐いて、足をぐっと広げた。それに合わせて孔が広がる感覚が恥ずかしい。
オレのつたない誘惑に、先生の喉がぐぅっと鳴る。
「っ、あ、気持ちがいい……。高尾と触れあっているところ全部、気持ちがいいのだよ……」
ぎらりと緑の瞳が輝く。さらに深いところに先生のが押し入ってきて、思わず指を握りしめる。
うまく息ができなくて苦しい。だけど目の前に頬を紅潮させて肩で大きく息をしている先生がいて、うれしくてたまらなくなる。
「……へへ、うれしー……っ。な、せんせ、もっと、ぅ、もっときて……もっと、きもちくなって」
先生の腰に足を絡めて、握りしめた指に力を込める。ついでに腹に力を込めて先生のを締めつけてやったら、先生が思わずといった調子で声をあげた。
一方的じゃないセックスが良くて、先生がオレに翻弄されるのが楽しくて、もっとできることを探したくなる。
「ぁ、っく、先生を煽るとは、……悪い子だ。お前も、もっと気持ちよくなれ」
そう言う先生の瞳は、さっきよりもっと熱を増している。
口づけられ、咥内を舐られる。舌を絡ませてきつく吸い上げられるだけでもどうにかなりそうなのに、がつがつと強く突き上げられるから、頭がどんどん蕩けていく。先生のがオレの奥深くを擦っていくたびに、脳が溶けて、骨が溶けて、でろでろの液体になってしまうような錯覚をおぼえる。
「ぁ……せんせい……すき、すきっ、きもちいよ、ぁ、う、ひぁ、でちゃ、ぁ」
「あぁ……高尾、可愛い、可愛い……好きだ、好きだ高尾……」
「ふぁ、ッ、そこやだ、へん、ッ、ひぁ、あっ、んうっ、や、やぁ、ァ……ッ!!」
絶頂は一瞬でやってきた。どこかに落ちていきそうな感覚に、思わず先生に強くすがりつく。ひょっとしたら爪を立ててしまったかもしれないけど、気づかう余裕はなかった。
ぶわりと意識が浮遊する。そのまま世界が真っ白に染まって、何もわからなくなる。やがて、自分のぜーぜーという呼吸だけが耳に飛び込んできて、あ、オレ生きてる、と思った。
「は、……高尾……」
しだいに視界がはっきりしてくる。先生が目を細め、オレの頬や瞼にキスを落としているのを感じる。
「先生……いった……?」
こくりと首肯を返されて、オレは満ち足りた気分になる。このまま眠ってしまえたら、ものすごく気持ちがよさそうだ。
「高尾……」
好きなのだよ。何回も聞いた告白を最後に、オレは意識を手放した。
2017.詳細日時不明
るうちゃんとの妄想DMを起こしたやつ。
確か緑間先生のセリフはるうちゃん作で高尾くんがそうま作